100年後の「私」へ




100年後、わたしは木に生まれ変わりたい。大地に根を張って、どっしり立ちたい。わたしは猫背だから、まっすぐ伸びる木になりたい。
100年後の地球はきっと今よりずっと緑が少なくて、だからわたしは貴重な存在だ。 日焼けを気にせず太陽を思いっきり浴びて、酸素を空に送り出す。一日中深呼吸をして 過ごすなんて、今のわたしには到底無理な話だ。木になってわたしは、たくさんの仲間 たちと一緒にアマゾンで長生きするかもしれない。荒野に植えられて、大事に育てられ るのもいい。都会だったら、クリスマスにはイルミネーションでぐるぐるに着飾って、 街を華やかにする。もしかしたら、わたしの足もとでお腹を空かせて死んでいく子ども を何人も見るかもしれない。
 木になったら、100年なんてあっという間だろうか。今はせっかちだけど、じっくり大 きくなって、ゆっくり根っこを伸ばす人生はきっと美容にもいい。
 だけど、100年後のわたしはきっと不安で仕方ない。充分な水と光は、いつまでそこに あるだろう。いつ切り倒されるかも分からない。目の前で、どんどん変わっていく景色を ただ見ているのも苦しい。
 そんなことを考えながら、今日もそこに立っているんだろうか。
 わたしが最後に木に登ったのはいつだろう。かといって、小さい頃たくさん木登りを した記憶もそんなにない。虫がいるから、木に触れるのはあまり好きじゃなかった。
アマゾンとかイルミネーションとか、本当は何でもいい。ただ100年後、木になったわた しのまわりでたくさんの笑い声を聞きたい。子どもも大人も、公園に来たら木が見られる。 空が青い。そんな当たり前の風景を100年後も見たい。
100年後、わたしは木に生まれ変わりたい。





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写真家 大野広幸 | 亥辰舎 |