第二次審査講評




●大野広幸(写真家・著者)
 期待を上回る作品の多さに驚きました。タイトルも興味をそそられました。
私の表現をしたかった双子は、2人がだだそっくりと言う概念の写真の撮り方 ではなく、「双子で生まれて来て良かった」という方々がこの写真に登場して います。双子さんたちの表情(笑顔)を見ると解ってきます。
 今回の選評に当たって、写真集の顔はやはり表紙になると思います。書店で まず手にとって貰わなくてはなりません。そこから第一歩が始まります。そして、 今回の写真は10年前との2枚の写真で表現されます。表紙の中で、一枚の写 真から題名等でどのように中身の写真に展開をして行くのかを含めて見させていただきました。

●橋村芳和(京都市会議員)
 京都市長表彰ということであり、楽しみに選考に臨みました。といっても、 書店でのアルバイト経験がある程度の門外漢の私にとって、双子の写真等の編 集コンテストは大いに悩みました。
 結論として「ニコニコ」がパッと手にとってみたくなる作品であり、ネーミ ングも親しみやすく、ブームを作る可能性を秘めているように思えました。「 きょうあしたふたり」は少し懐かしい印象を受ける好作品でした。次点の「向 かい合わせの肖像」は、完成が一番楽しみな作品であり、期待が寄せられます。
 双子のご家庭からは、子育ての喜びの反面、その大変さや支援制度充実の声 をよく聞きます。そんな方々を応援する作品が出来ればと楽しみにしています。

●北憲一(京都芸術デザイン専門学校ビジュアルデザインコース主任)
 審査対象の多くが本校の学生、それも1回生だったために、当初よりデザイン の完成度の高さはあまり求められないと考えていました。
しかし、選ばれた4作品を見てみると、そこには彼らの新たな可能性が垣間見ら れたようにも思いました。
 教員の指導がほとんど入らない状態だったにも関わらず、審査会で話が出まし たように彼ら独自の研究の成果や視点、時代感覚等が拙くも端的に表現されて いたように思います(といっても、実際にはまだまだこれからですが…)。
 やはり、若いことはそれだけで素晴らしいですね。 本コンテストの第2回・第3回にはより多くの美大芸大生、一般大学生、 そして市民の方から、参加応募があることを祈ります。
※第一回の今回は学生のみの応募資格

●日沖桜皮(編集プロダクション桜風舎・出版社コトコト代表取締役・京都精華大学人文学部編集技法非常勤講師)
 忙しいなか、いろいろと嗜好を凝らしたたくさんの作品を寄せていただいた ことを嬉しく思います。長期低落傾向にある「紙媒体」の必要性について、世 間ではいろいろと論じられていますが、たとえ木を切り倒してCO2や廃液を 排出しながら印刷をしたとしても、やはり「物体としての魅力」をもった「本」 から人々が得るものは決して少なくないと、みなさんの作品を拝見し、そして 作品提出までの道のりを想像させていただきながら思った次第です。
ひとつ残念だったのは、「本の表紙」のプレゼンテーションの場面であるという 自覚が少々足りないのでは?、と思わせる作品が散見されたことです。
たとえば、用紙のサイズを示す「トンボ」が明示されていない作品がいくつか あったこと。トンボがないと「本のサイズ」が判断できないわけで、正直、これ では選考のしようがありません。なんとか想像して選考を進めましたが・・・。
「まだ教わっていない」あるいは「ちょっと忘れただけです・・・」という声が 返ってきそうですが、ここではトンボの例だけについて触れましたが、デザイン のセンスやパーツのかっこよさだけでなく、こういうことがいかに大切であるか、 この機会に考えていただきたく思いました。
全体では「次点」にランクされましたが、私のなかの圧倒的第1位は、『向かい 合わせの肖像』でした。
大野先生の作品サイズから横位置の版型を選択したことにセンスを感じました。 そして、一見なんの変哲もない書体(タイトルと作家名)ですが、おそらくこれ は、試行錯誤を重ねた結果ここに戻ってきたのではないかと私は勝手に推測しました。 「奇をてらう」まではいかずとも、タイトルの書体で特徴を出そうとした作品が 他に多かったなか、写真に目を行かせ、文字はあくまで脇役を貫こうとしたこと が感じられました。おそらく、写真集というものをよく研究された結果ではない かと思います。「双子」というテーマに、シンメトリーデザインを成功させたの も、この作品のみでした。ただ、言葉は悪いですが、「玄人ウケ」はするものの、 「インパクトの強い売れる本」の表紙を意識しているかといえば、ノー。また、 写真と文字の距離など、パーツや細部のデザイン力はまだまだこれからでしょう。 しかしながら、作者のデザイナーとしての潜在能力が感じ取られる作品でした。 全体の1位に選ばれた、『きょうあしたふたり』は、私も2番手評価でした。A4 やそれ以上の大型判を提案してきた作品が多かったなか、B5ベースの正方形と いう版型は、タイトルとも相まって、「売れる商品」としての魅力を感じさせま した。そして『フタツナガリ』が3番手評価でした。タイトル、そしてタイトルス ペースの使い方、書体など、上手でした。これも、正方形のトリミングが成功し たと思われ、結果的に今回の私の選考のひとつの基準になった「大野先生の作品を もっともヴィヴィッドにみせる写真比率」に長けた作品が、私の中では上位をしめ たかっこうになります。
いずれにしても、精選された4作品からいよいよ完成品が誕生するかと思うと、 いまからドキドキワクワクせずにはいられない、そんな選考会でした。

●樋野康二(大平印刷制作部部長)
個別の講評です。
1位の「きょうあしたふたり」はサイズも手にしやすそうで、幅広い年齢層からも 親しみやすいデザイン(私のランクでは3位)。2位の「ニコニコ」はコピー、デ ザインともにキレがある(私のランクでは1位)。3位の「フタツナガリ」は若い 世代に受け入れられそう。(私のランクでは2位)。

●浅井潤一(出版社マリア書房元編集部長・現亥辰舎)
審査作品は中学生から大学生までバリエーションにとび、見ていて大変刺激になり ました。今回の「本を完成させる」趣旨から、最終的には組版技術などを考慮せざ るを得ませんでしたが、それぞれ表現された作品はこれだけでもコンテストが成り 立つのではと思いました。最終選考に選ばれた4名の中からたった一人が大賞に選 ばれますが、この実務に沿った制作のプロセスは、きっと将来出版界に進んでも役 に立つと思いますので、選ばれた皆さん是非がんばって欲しいと思います。



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